1.《ネタバレ》 男は川辺で露天生活を営む、粗暴で反社会的な人物。身投げ溺死者から金品を奪い、礼金と引き換えに遺族に死体の場所を教える。孤児に物売りをさせ、不倫を目撃すれば恐喝もする。そして、稼いだ金は酒と賭事に消える。あるとき女が身投げをし、男が助けたが、後で強姦し、自分の慰みものとする。女は逃げようとするが、老人と孤児に扶助され、共に暮らし始める。女の自殺の理由は集団強姦された為だが、男が調べると、女の恋人が暴力団に依頼して強姦させたのだった。男は恋人を拉致し、女の前で真相を暴露し、銃で撃った。その夜、二人は結ばれた。しかし、女は再度入水し。男は女の絶望を知っているので、助けずに、死の伴侶となることを選ぶ。男は女を水底のソファに腰かけさせ、自分と手錠でつなぐ。絶望した二人の壮絶で、美しすぎる死だ。実に絵画的な映画だ。あらゆる場面が絵で彩られる。天幕横に絵の敷物があり、堤防に芸術めいた落書きがあり、警察の似顔絵描きが登場し、女が男の似顔絵を描き、男が亀と手錠に色を塗る。二人が結ばれる姿の映る水面の凄艶さ、最後の死の場面での青き月光にゆらめく二人の姿の醇美さは 神々しいほどだ。水へのこだわりが感じられる。亀は不器用に生きる男の投影で、手錠は絆・運命、青はあこがれ、紙舟は魂の象徴である。亀と手錠を青く塗るのは、理想郷に行きたい願望の表れだ。男は理想郷は海の果てにあると思い、海に達せず没む紙舟を嫌悪していたが、老人から昔の川は綺麗だったという話を聞いて、理想郷は水底にもある信じこんだ。そして、水底に長椅子、堕天使の絵画を配備し、理想の世界を造ろうとした。救いの無い物語だが、理想郷で死ねたという意味で、男にとっての救いはあった。奇抜な発想と演出の連続で観客を魅了する手法は評価できるが、荒削りな部分が多い。「女に振られたか?」と男に声をかけた警察官が、唐突にホモを迫る。相手がホモでないのを知っているのにどうして迫る?子供を騙して、銃を撃たせる殺人は、非現実だ。自動販売機の中に入って珈琲を売るというのは茶番劇だ。女が居つくようになった理由、男と結ばれた後に何故自殺したか、掘り下げが足りない。一方で、男の背景描写が一切省略されているというのは、ある意味清々しい。それだけ想像が広がるわけで、成功している。底辺の人を見守る優しい眼差しがある一方で、子供に殺人させるなど灰汁が強い。