4.《ネタバレ》 今回が初見であり、特に思い入れがある作品ではない。
ジャン・ギャバンという俳優についてもよく知らずに鑑賞。
ストーリー自体は大したことがないが、古臭い作り、設定、雰囲気が逆に新鮮に感じられた。
それぞれの愛憎や嫉妬が渦巻き、それらによって悲劇を引き起こすという流れもそれほど悪くはない。
現在のアルジェリアの首都アルジェのカスバでは王様かもしれないが、カスバから街へ出ることができないという、力を持った無力の男という物悲しさも伝わってくる。
街へも自由に行けないのだから、フランスへ戻るということは夢のまた夢なのだろう。
彼の苛立ちから、うっくつした重々しい想いが感じられる。
ストーリーの鍵となる女性との関係や、邦題のタイトルである望郷への想いがじっくりと描かれていない点が本作の難しさだろうか。
じっくり描けば良い場合もあるが、逆に描かないことによって観客に何かを感じさせるという場合もある。
本作がそういう効果を狙っているのかどうかはよく分からないが、描かなくても様々な想いというものは本作から伝わってくるようになっている。
故郷やパリを想起させてくれる女性である「ギャビー」の名前を叫ぶセリフ一つだけで愛する女性に対する想い、故郷に対する想いが痛いほど心に刻まれるのではないか。
おばさんの歌からも同様のものを感じられる。
夢に描いた想いは叶わずに消えていく、“現実”ともいえる哀しさがどこか切ない。