2.《ネタバレ》 魔女三部作の最後(この当時まだ第二部にあたるインフェルノは観ていない)。
魔女の物語をここまで壮大にしてしまったダリオアルジェントに脱帽。
ただ、超名作サスペリアの持つ「狂気」と「カルト」、それから「変態性」が大きく損なわれている点が残念だ。
またゴブリンのサウンドを失ったサスペリアを正当の続編として良いものだろうか。
恐ろしく中毒性のある「ウィッチ」の囁きが「マーテル」に変わったのも正直いって微妙だった。
ハスキーボイスのヒロインはあまり好きではない。
ローマを舞台に美術史によって紡がれる物語はダビンチコードの色合いも感じる。
サスペリアの狂気の世界が普通のオカルト映画になってしまったと最初は残念でならなかった。
しかしだんだんと物語に独特のスペクタクルが発生し、狂気もその裏で隠れ潜んでいるようで、
ダリオアルジェントらしさをふつふつと感じることができて面白くなってきた。
最後はサスペリアらしく収拾されるのはさすが巨匠。
この監督さんは変態であり、女性が殺される描写の異常ともいえる執着は年老いても健在なようだ。
近代的な映画の技法と古典的スプラッタの技法が一緒になったところに妙な斬新さを覚えた。
多数の歴史絵画を用いた壮大過ぎる魔女物語の終幕には吐息が漏れる。
テーマ曲はゴブリンの絶叫には劣るが、ブラックメタル界のアイドル的ヴォーカリストであるダニ・フィルスが歌ってるようだ。
サスペリアのプログレサウンドが本作ではゴシックメタルになったのも何か少し残念であるが。
余談であるが(記憶が正しければ)ダニフィルスは魔女ではなく吸血鬼だ。
ところで吸血鬼っていえば三人の魔女を従えていたと思うが、この映画でも三人の魔女がテーマなのが個人的に面白い。
ダリオアルジェントからすると原宿系ギャルやコスプレ女子、ゴスロリファッションは魔女の影響によるものらしい。
つまり現代社会でもサブカルの中に魔女の勢力は息づいているようだ。