1.《ネタバレ》 屋根伝いの危険なスタントあり、操車場の高架から列車へ飛び乗るスタントあり。
アクションの演出も頑張っているし、空爆シーンは予算の都合らしく音響だけでの表現だが、
それでも十二分に空襲の恐怖感を伝えている。
ルノワールその人を思わせる相貌のチャールズ・ロートンの演説と身振りはヒトラーとは真逆で穏やかで淡々とし、
語る彼の姿よりも、それに聞き入る人々の表情に多くのショットを割いている。
その中で、彼を万感の想いで見つめるモーリン・オハラが一際美しい。
中でもルノワールらしいのが、映画の中盤、彼女とロートンがガラス戸を挟んで見つめるシーンだ。
屋内と屋外の空間処理の巧さもさることながら、彼女への想いをうまく伝えられない彼の気弱でシャイな姿が何ともいじらしい。
その彼が、ラストで彼を引っ立てようとするドイツ兵士の手を毅然と払い、胸を張って校舎を歩み出て行く。
映画前半の臆病を吹っ切った彼がみせる、さりげないが意思的で尊厳に満ちた身振りの数々が感動させる。