1.《ネタバレ》 『青いパパイヤの香り』『夏至』『シクロ』と、寡作ながら圧倒的な映像美を誇る傑作を放ち続けているトラン・アン・ユン監督の久々の新作。キムタクが出ているということで、賛否は両論だが、トラン・アン・ユン監督の作品なら、そんなの全然気にならず。しかも音楽を、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ作品で素晴らしい音楽を披露したグスターボ・サンタオラヤが担当。トラン・アン・ユン監督が放つ映像美とのコラボレーションに期待が膨らんだ。さてさて、内容だが、はっきり言って解りにくい。少なくとも一般受けしそうにないストーリー展開であった。又、最後も言いたいこと、結論めいたものは明確には伝わってこず、消化不良のまま映画館を去った人が多かったのではないだろうか。でも、私個人的には大満足とまではいかないまでも、楽しむことはできた。フィリピンや香港などのアジアの躍動感と神秘性が伝わってくる美しい映像、それに呼応するかのように“鳴り響く”グスターボ・サンタオラヤによる叙情的なBGM、アメリカ・フランス・韓国・日本のイケメン俳優による競演、そういった部分だけで十分に楽しめたのだ。特に映像センスに関しては、さすがはトラン・アン・ユンといった貫禄で、極端に言えば、ストーリーが何だっていいような気さえした。それだけ、トラン・アン・ユン印の映像美は素晴らしい。この作品の魅力はその一言に尽きるわけで、キムタクの演技や、イ・ビョンホンの存在価値の不明さや、ストーリーの意味不明などは、別に取るに足らないのではないだろうか。監督の奥さんでもあり、監督の全ての作品で重要な女性役を演じているトラン・ヌー・イェン・ケーだが、本作ではかつてのイメージを覆すような熱演を見せていた。さすがに歳を取った感は否めなかったものの、それでもスタイルはまだ美しいし、独特の雰囲気もまた良い。ダテ男揃いの俳優陣の中で、一際かっこよかったのが、韓国代表のイ・ビョンホン。特に、紫のシャツを着て、カチっとキマったグレーのスーツを着込んで颯爽と歩くシーンは、かっこよすぎる程かっこよかった。ほんと、男が惚れるほどのかっこよさだ。しかもそこにグスターボ・サンタオラヤの音楽が挿入されると、効果倍増!こんな雰囲気で最初から最後までひっぱってくれたら、傑作間違いなしだったのになぁ。