1.《ネタバレ》 この映画はパトリシア・ハイスミスの「アメリカの友人」が原作、ということはヴィム・ヴェンダースの撮った「アメリカの友人」と同じ話というわけです(ヴェンダース作品は未見ですが、この映画とは全然雰囲気が違うそうです)。トム・リプリーとくれば「太陽がいっぱい」のアラン・ドロンがやったキャラだとは知っていましたが、殺人が発覚して捕まったはずのリプリーになんで後日談があるのだと不思議だったのですが、原作ではリプリーは完全犯罪を達成してシリーズ化されたと知り納得。アラン・ドロンやマット・ディモンが演じた役を本作ではなんとジョン・マルコビッチが4代目トム・リプリーを演じていますが、意外にマルコビッチがいい味出していますね。舞台はイタリアやドイツで、ロシア人やウクライナ人マフィアが登場していかにもヨーロッパ風味のサスペンスに仕上がっています。リプリーをパーティの席上で侮辱した一人の小市民が、リプリーの策略にはまって思わぬ事件に巻き込まれて人生を狂わされてしまうのですが、マルコビッチがマルコビッチらしさを爆発させて悪魔のような怪しい魅力を見せてくれます。この映画は全体的にリプリーの背景説明が不足しているので、普通に観るとリプリーの行動が理解できないのですが、マルコビッチの迫力で妙に納得させられてしまいます。リプリーも巻き込まれるジョナサンもそれぞれ妻がいるのですが、だんだん二人の間にホモセクシャル的な雰囲気が感じられるようになるのは原作の精神に忠実なのでしょう。そうじゃないとあのラストは理解できないでしょう。リリアーナ・カヴァーニってかなりの高齢だと思いますが、エネルギーはまだまだ衰えていないみたいです。第二のリーフェンシュタールとなるのかな。