1.邦題は『フルスピード』だけど、古き良き街並みの中をクネクネトロトロ走り回るようなタイプのカーチェイス作品でして。全然フルスピード出してないのです。しかもカーチェイスものとしては、クラッシュシーンが少なくて、ちとさびしい。では、どうして邦題が「フルスピード」なのか、と申しますと・・・要するにあのヒット作『スピード』と、設定が似てなくもないので、例によって一応、まぎらわしいタイトルをつけておこうかな、ってなところでしょうか(三流作品の宿命ですな)。どこが『スピード』に似てるかというと、主人公たちの乗った車、そこには実は爆弾が仕掛けられており、カーナビを通して犯人が指示する通りに走らなかったり、シートから腰を浮かそうとすると、自動的に爆弾が爆発!・・・と言いたいところだけど、本作の場合、爆破システムは自動ではなく手動なのでした、ハイお粗末さま。上記の条件に加え、さらに犯人の気が向いて爆破ボタンを押したら、ようやく爆発する、というのが、何とも緊張感に欠けるところ。という訳で、かなり小粒な作品ではありますが、しかししかし。物語の展開が、基本を押さえているというか(あるいは古臭いというか?)、なかなかツボを押さえているのです。単なる身代金目的と思いきや、裏には裏のある、意外な展開(まあ、そこそこに、ですが)。そこに絡んでくる他の登場人物たちもいい味出してて、主人公を助け真相を暴こうとする友人は、足が不自由で車椅子、ってのがまさにサスペンスの王道。警察はというと、例によってポンコツ警部が登場し、事態を解決しようとしているのやら、混乱させようとしているのやら。この作品、全体的に見れば、「ご都合主義」「爆弾犯の意図ワケワカラン」「ツメの甘い作品」と言う人、そりゃまあ多いでしょうよ。うん、認めますよ。でもね。こういう懐かしい味わいの楽しい作品、今どき、結構貴重じゃないかなあ、とも思うんですよ。