1.《ネタバレ》 不器用な生き方しかできない男が、長い年月を経て再び愛する妻のもとへ帰るというストーリー。とかくドライな現代にあってはファンタジーになってしまいそうではある。
ふたりの愛が長い年月を乗り越えるには、相応の何かがあるはず。極々普通の人間が社会でもがきながら生きる中で巡り会い、惹かれあい結ばれることを納得させるだけの何かを描かなければならないと思う。しかし本作ではそのあたりが山田版に比べ弱いように感じる。その原因はウィリアム・ハート演じるブレッドの性格付けが若干淡泊であることかもしれない。高倉健演じるところの島勇作のような内から迸る生きるエネルギーのようなものがあまり感じられないため、メイがそこまでブレッドに惹かれた理由が余り伝わってこない。
とはいえストーリーそのものが大変魅力的でることに違いはなく、ラストシーンではグッと来るし、全体に流れる穏やかな空気にも癒される。山田版に感銘を受けた人は見比べてみるのも面白いと思う。