1.《ネタバレ》 口跡の良さで女優を選ぶ、と語ったのは鈴木則文監督だが、
本作での杉咲花もその声の響きが何よりの特長で、
病院での出のショット、同じくラストでの登場もまずオフからの
彼女の甲高い声が画面に響く。
走り、泳ぎ、自転車を漕ぐ彼女の躍動的なフォーム、
病んだ男たちの泳ぐ視線とは対照的に真っ直ぐ覗き込むような眼にも力がある。
野田洋次郎とリリー・フランキーが語り合う、
白シーツ揺らめく病院屋上シーンの曇天は狙ったものか、たまたまか。
いずれにしてもそうした天候のメリハリも、杉咲とのプールシーンや田舎のシーンの晴天と風を際立たせるのだが、
ここでの野田のアップと涙のショットや、宮沢りえの台詞過剰は、
やはり甘いのではないかと思う。
リリー・フランキーの撮った動画映像も、主人公の死後にだけ見せる形にしたほうがすっきりして
より効果的だったのではないか。