1.《ネタバレ》 なんだかんだで目が離せないシャマラン監督。しばらく雇われ監督的なポジションをこなしていたが、自ら企画した「ヴィジット」に続き、本作もシャマ節全開の作品になっている。
まず普通に面白い。
クラシックな監禁スリラーに、興味深い多重人格者の設定や、24人目にまつわるミステリなど、様々な要素を加味しているのが良い。
女子高生のキャラ付をさっさと済ませた後は、するりと日常が地獄に変わっていくテンポの良さもなかなか。これらをまとめあげるシャマランのストーリーテリングに狂いは無い。マカヴォイのパフォーマンスも素晴らしい。
題材となっている多重人格。これはスポット制度、3人の女性被害者、24人目の人格などから察するに、同じく23(+1)の人格を持つビリー・ミリガンに着想を得ているのだろう。彼の場合は最後の人格が「教師」だそうだが、本作では24人目に「ビースト」を創り出すことで、「人格次第で身体能力も変わる」という設定が、映画的な面白さに昇華している。
(ちなみに本家ミリガンに関しては、ディカプリオ主演で映画化が予定されている。ディカプリオはJ・ベルフォート、J・エドガー、H・グラスなど実在の人物を多く演じているが、さらに24人プラスとはとんだスプリット野郎である)
個人的に一番面白かった点は、ユーモアと悪意が織りなすなんとも言えないあの空気感か。
怖い・不気味・絶望的だが、どこか滑稽。最悪の状況で踊り狂うヘドウィグの狂気じみたユーモアなど、このさじ加減はシャマランの上手い所である。
また時折あらわれるシャマランの悪意も面白い。
なんせ主役以外の2人は何の武器もない普通の高校生。
「リア充?ビーストに喰われちまえ!!」と言わんばかりの設定だが、この部分こそ本作のキモでもある。
SNSでの評判ばかり気にかけて、車を待つ主人公には「彼女はUber(配車アプリ)で帰るんじゃん?」と言うような今時のリアル(を拡張した)高校生。(※Uberの下りは字幕では省略されている)
誘拐事件は架空の場所ではなくKOP(※キングオブプルシア、アメリカ最大級の実在するショッピングモール。誘拐後、ニュースで名指しで登場するがこちらも字幕では省略されている)で発生する。
青島刑事ではないが、事件はSNSのタイムラインではなく彼女たちのリアルで起きているのだ
しかしながらネット上で生きている彼女たちにとっては、拉致監禁など半年習ったケンポーカラテで打開すればいいだけ。3人力を合わせればどうにかなるでしょという戦略だ。
当然そんな精神ではこの世界を生き抜けまい。
傷つくことなく眠ったまま生きてきたからこその価値観・世界観。そういうものはシャマランおじさんが全部まとめてぶっ壊す。
自分はフーターズ大好き野郎で出演しておきながら、なかなか毒のある鋭い展開で魅せてくれるではないか。
最後に唐突な続編発表をしたときは「何勝手にシャマラン・ユニバース始めてるんすか」とも思ったが、やはりそういう部分も含めて個人的に気になるシャマラン監督なのである。金髪は胸、黒髪はケツというチョイスも個人的には支持している。