1.《ネタバレ》 いきなりネタバレしています。ご注意下さい。
本作で採用されているSFギミックは、限定空間における時間のループ。特徴的なのは、集団(場所)によってループの間隔が異なること。数日(特定できませんが3日以上?)から、最短数秒(!)と幅広いです。恐らく死がループの終点としてセーブされる仕組みなのでしょう。脱出を試みて失敗した分だけ、ループ間隔が狭まる危険性あり。となると、下手に抗わずループ間隔を確保する方が、快適な生活を送れるワケです。ものは考えよう。衣食住足りて、病気の心配もなく、永遠の若さを保てると捉えるならば、そこは理想郷(=アルカディア)なのかもしれません。ですから囚われの身になろうとも、弟が村に残りたいと希望したのも無理からぬ話。それほどまでに、兄弟の現実は辛く厳しいということ。しかし、自由なく、成長なく、未来に対する希望のない場所に、幸せはあるのでしょうか。少なくとも“生きる”とは、自由や成長を欲し、未来に希望を持つこと。この場所を統べているのが神なのか宇宙人なのか分かりませんし、天国か地獄かも判然としませんが、いずれにせよ生きている人が居てよい場所ではないでしょう。ループ空間から脱出直後の兄弟のやり取りが秀逸です。たとえガス欠でも走り続けよう。今までだってそうだった。でも意外と走れるものなのよ。クソみたいな現実を生きていく為に必要なのはバイタリティ。そして生き方を自分で決める主体性。己が人生と向き合う覚悟ができた兄弟は、しぶとく現実を生き抜いてくれるはずです。もちろん彼らの置かれた状況は、以前と何ら変わりません。進む道の傍らには、あの杭が無数に見てとれます。そう、ループに入るのは簡単なこと。私たちは何時だって、死と隣り合わせに日々を生きているのですから。