1.《ネタバレ》 幼いころ、父とともに移民としてアメリカへやって来た17歳の女子高生、エリー・チュウ。貧しいながらも明晰な頭脳を持つ彼女は、クラスメイトの課題や宿題を代筆することで苦しい生活費の足しにしていた。そんなある日、エリーはアメフト部に所属する同級生のポールからある依頼を受ける。なんと彼が恋焦がれている女の子へのラブレターを代筆してほしいと言うのだ。「バカじゃないの!思いを伝えたいなら自分で書くべきよ」――。そう断ったエリーだったが、今月の生活費がピンチだということもあり、渋々引き受けることに。相手のことを調べ、彼女の気を惹くような手紙を書き上げたエリー。すぐにフラれると思っていたエリーだったが、思いがけず相手から返信が届くのだった。こうなったらとことんやってやる。ポールのふりをして何度も彼女とやり取りを重ねる中、エリーは自らの隠された思いに気付いてゆく……。お堅い地味系女子が、ろくに喋ったこともない女の子と恋文を交わすことで本当の自分を受け入れてゆく姿を瑞々しく描いた青春ラブストーリー。SNS全盛のこの現代に、まさかこんな古風な設定のラブストーリーが制作されるとは!でも、これが逆に新鮮でしかも意外に違和感なく最後まで観てられましたね。主人公が相手を代筆で落とすために手紙一辺倒ではなく、ちゃんとスマホやSNSも駆使しているところがミソ。この古風と最先端の使い分けが非常に絶妙で、しかもこの監督のポップな映像センスとも相俟ってなかなかキュートなお話になってたんじゃないでしょうか。例えば、ポールと相手の女の子が何とかデートへとこぎ着けるシーン。緊張していつまでも打ち解けられない二人を見かねた主人公が、お互いとそれぞれのスマホで連絡を取り合うなんて、ネタ自体はありがちなのに見せ方がすんごく新しい。ここらへん、監督のセンスが炸裂しています。そして、普通のベタな恋愛ものなら、この恋を成就させるために頑張っていた主人公と男の子がそのうち両想いになっちゃうみたいな展開になるんだろうけど、本作は違います。「え、まさかのそっち?」という意外な展開を見せるのも現代的で大変グッド。ラストが幾分か腰砕けちゃったところがいささか残念だったけど、アナログとデジタルを使い分けるこの監督のセンスの良さは充分堪能できました。あと、これは余談なんですけど、この作品を配信しているネットフリックスさん。その作品紹介で本作を「LGBTQ映画」と書くのは違うんちゃいまっか。それって、完全にネタバレですからーー(怒)。