3.《ネタバレ》 狭くて暗い画の中にべったり塗り込められたタールのような重たい狂気。灯台が舞台だけど明るさは1ワットもないので気が滅入る。
神話や絵画のメタファーが多くて、その辺の解説はネットを参照すれば「ああそうか」となるけれど分からずに観てても迫力に押されてあっという間の109分であります。
ウィレム・デフォー、あんな声だっけ。かっと見開いた特徴的な目で彼だと分かるものの、そこにいるのはトーマス・ウェイクという横暴で口の悪すぎなイカれ爺なのだった。すぐキレて若者に怒鳴り散らすその長広舌の文学的なこと。このじいさん、それなりに教養あんのとちゃうか。くそ長い呪いの台詞をまばたきもせずに言い切るデフォー。あまりの迫力にイーフレイムの怒りは引っ込み、「わかったよあんたのメシ美味いよ」と収めるシマツ。笑っていいんだかなんだか。
なんせ二人とも狂っていると思われるので劇中ずっと“正しい状況”を判断しかねる状態に置かれてしまうのだ。
巷間いろいろな説があるけど、わたしは「冒頭から嘘つきイーフレイムの目線に付き合わされていた」説に一票。ウェイク爺さんはヤバい奴だけど実のところもっとヤバいのはイーフレイムの方だったのでは。
そもそも語り手がイーフレイム自身なのだから、「勤勉に仕事をこなし、貯金に励む」その姿が怪しく見えてくる。ウェイク爺さんがつけてた日誌が真実なんだろうな。
それにしても難解。21世紀のホラーの境地は偏差値が高いなあ。