5.《ネタバレ》 メロドラマ風な安っぽさも感じるが、それぞれのエピソードが意外ときちんと有機的に機能しており、優れた映画として評価できる。
「親の気持ち子知らず」、「子の気持ち親知らず」というテーマがきちんと描かれていたのではないか。
父親としては、それぞれの娘に早く自立してもらいたかったのかもしれない。そうでなければ、三人の娘全員を大学に通わせたりはしないだろう。
二人が結婚し、もう一人も自立の目途が立ったので、ようやく行動に出たのではないか。
娘たちに自立してもらいたいが、娘たちに対する「愛情」も持ち合わせている。
日曜日の晩餐はその不器用な「愛情」の表れだろう。
しかし、父親のそんな気持ちを知らずに、長女と次女は父親の世話を重荷に感じながら、気まずい関係に陥っているのが、映画にとっていい味にもなっている。
長女の大学時代の失恋話も、次女(と自分自身)を納得させるだけの口実に過ぎなかったのかもしれない。
一番早くに実家を出たかった次女が、結果的に三女、長女、さらに父親よりも遅くまで実家に残るという構造が見事だ。
ラストも実に秀逸だ。「親の気持ち子知らず」、「子の気持ち親知らず」というテーマが見事に昇華されている。味覚を取り戻し、次女のスープの味が分かることで、「子が父を思う気持ちに、父が気付いたのではないか」と感じさせるものとなっている。
本当に美しいラストである。
やはり、アン・リー監督はアカデミー賞を受賞できるほどの才能を持ち合わせていると感じることができる。
撮影方法に関してもセンスの良さが随所に感じられる。
よくありがちな手法だが、レストラン内の撮影も見応えがあり、料理も非常に美味しそうに撮れている。