4.《ネタバレ》 ヒッチコック心酔者のフランソワ・トリュフォー監督が挑んだミステリ映画「黒衣の花嫁」
フランソワ・トリュフォー監督は、アルフレッド・ヒッチコック監督の心酔者だけあって、この「黒衣の花嫁」の他にも、「暗くなるまでこの恋を」など、ミステリ映画を撮っている。
フランスは、コート・ダジュールのアパートで独身生活を楽しんでいる一人の男がいる。
友人宅のパーティーに訪れて、妖しいまでに美しい女性に出会う。
女性は、その男をテラスに誘う。その直後、その男は、テラスから落ちて死んでしまう--------。
そこから、ほど遠くない町に、銀行員が住んでいた。その銀行員の手元に、音楽会の切符が届く。
心を弾ませて銀行員は、音楽会に出かける。
桟敷には美貌の女性が待っていた。そして、彼女は、翌日、銀行員のアパートを訪れる約束をした。
約束どおり、その女は来る。
しかし、銀行員は、青酸カリで殺される--------。
三人目の男。若手政治家だ。この男も女の毒牙に。女は男の「なぜ?」という質問に答える。
その女の結婚式の日。五人の狩猟仲間が、ふざけて、教会の風見鶏を狙って撃つ。
その弾が、誤って新夫に--------。
思えば、似たような映画があった。日本映画の「五瓣の椿」だ。
似ているはずで、両作品とも原作が、コーネル・ウールリッチだからだ。
「五瓣の椿」は、コーネル・ウールリッチの小説を、実に巧妙に江戸の世界に、山本周五郎が移し替えたのだ。
私は、二度目に、この「黒衣の花嫁」を観た時、トリュフォーが、いかに、お師匠さんのヒッチコックの手法を、取り入れたか、という視点で入念に観ました。
そして、トリュフォーは、師匠を乗り越えたか、という視点でも観ました。
その答えは「NO」。ヒッチコックに及ばざること遠しだ。
ただ、この「黒衣の花嫁」でも「五瓣の椿」でも、主演女優の出来はなかなかのものだった。
ジャンヌ・モローの妖しい殺人者、演技開眼の力演が素晴らしかった岩下志麻。
そういう意味では、両作品とも成功作だろう。