2.少女のやや異常な成長物語。身内の人間に男を見てしまった少女が、そこから巣立っていくまでのいささか精神病理学的な物語なんだけど、そういうのにありがちな異常の押し付けがましさや大袈裟なシーンを伏せ、淡々と進めていくところが巨匠の上品なとこ。氷の中に封じ込められてしまった死体が、幼時の叔父への憧れが凍りついてしまった女性と重なっていく。それが次第に融けていくストーリーで、外の世界=ガイドの男も絡んで、視線のドラマが堪能できた。人物には脇や背後から光が当てられ“ワケアリ”の翳りを出している。ヒロインの笑顔が微妙に曇っていいんだな。これ最初はモノクロで撮りたかったそうだが、氷河の内側のトロッとした緑を出せただけでもカラーにした甲斐があったんじゃないか。少女時代の憧れが心の底にまだ光りヌメッてる感じ。ケイトの側のドラマは丁寧に描かれてるんだけど、叔父さんの側がちょっと弱いか。