9.《ネタバレ》 ローレンスは、洗練された態度と物腰で壮大な物語を創りあげ、富豪有閑婦人から巧みに大金を巻き上げる大物詐欺師。フレディは、さもしくも女性の同情を引いて小銭を巻き上げる小物詐欺師。二人は南仏のリビエラで縄張をめぐって対立し、どちらが先に目標の女性を騙すか勝負し、負けた方が去るという取り決めをする。目標になったのは歯磨き会社令嬢のジャネットだった。
二人が出会って、諸事あって、いつしか師弟関係となるが、実はそれはローレンスがフレディを追い払う作戦だった。この一連の導入部の進展が絶妙だ。二人は最初から最後まで争っていることになる。だから緊迫感が持続し、笑いも絶えない。
内容は、詐欺師同士の騙し合いで取り立てて目新しいことはないが、最後の二つの仕掛けだけは新鮮だった。
一つは、登場する女性は単純で、騙されやすいこと。これが観客を誤誘導し、実はジャネットは詐欺師だったというどんでん返しに観客があっと驚くと仕掛けになっている。もう一つは、去ったジャネットが帰ってくること。そして三人が手を組むことになる。騙されたままでは後味が悪いが、戻ってきて仲間になるのなら、鑑賞後感が爽やかだ。これがこの映画が愛される理由だろう。ローレンスの渋い演技と、フレディの大袈裟な演技との対比も見逃せない。良質の喜劇だ。