1.何とも言えぬ味わいの(笑。ホントに何と言っていいやら)、不条理サスペンス。ある日、配管工と称する男がやってきて、「管理人に頼まれたから」と浴室の工事を始めるが、これが何とも怪しい男。で、普通の映画なら、この男、何やら裏で悪だくみを働いていて、やがて思わぬ真相が明らかに~~ってな展開が期待されるところですが、本作、そんな小細工なし。この配管工、ただただ、迷惑なだけの困った人。悪人ですらない。工事は一向に進まず、浴室は荒れ放題。勝手な事ばかりする配管工、しまいにゃギター片手に歌い出す始末。彼の奇行に悩まされるこの部屋の奥さんが本作の主人公で、その戸惑いや不安感が、なかなかに上手いのです。何を考えているか分からない、けれどもこういうヤな奴っているよな、という感じの配管工の男、彼との間にはまるでコミュニケーションが成立していないんだけれど、「どうやら自分以外の人間は彼とコミュニケーションが取れているらしい」という不気味さ。誰に相談しても、それこそ旦那に相談しても、まるで埒が明かず、孤立感はいよいよ募っていく。と言う訳で、この作品、テレビ作品らしく安っぽい部分もあるし、ここでコマーシャルですよ的な暗転が入ったりもするのですが、社会生活の根幹とも言うべき「他者とのコミュニケーション」というものが本来的に持っている不確実さ、不安定さを、不条理世界の中でサスペンスとして描いてみせた、なかなかにユニークな作品であります。 オチも実に辛辣。