1.『欲望』に次ぐ放浪三部作の二作目は、音楽はハービー・ハンコックからピンクフロイドへ、舞台をロンドンから南カリフォルニアへ移す。自由を勝ち取るための学生紛争の不自由さから逃れるように一人の青年が砂丘地帯へやってくる。そこで同じく大人社会から現実逃避的に一人さまよう女と出会う。この若い男女の顔がなんともアントニオーニの映画に映える。とくに男のほう。ドラッグ効果も相俟って男と女の間に幻想的な世界が繰り広げられる。愛が無限の広がりを見せる様を美しく映し出した画は圧巻の一言。爆発シーンはアメリカ映画っぽく、アウトローの死もアメリカン・ニューシネマを彷彿させるが、アントニオーニの意図やいかに? ともあれ、アントニオーニらしい不条理感に溢れた作品であることは確かである。そして『欲望』と同じく、この作品もまた、男と女の出会いすらが幻想だったかもしれないという、ストーリー不在の作品である。