2.大映作品らしい重厚さとモノクロの美しさを併せもった作品で、完成度は高い。
しかし、どうにも加東大介がミスキャストだ。
陸軍中野学校を率いる教官として、人間的厳しさが要求される役どころだが、加東大介にそれを演じさせるには無理がありすぎる。
加東大介は大好きな俳優だが、この役柄を演じるには相応しくない。
ユーモアと人情味あふれる役を演じさせてこそ味の出る俳優なのだから。
小川真由美だが、本作から10年後に作られた『実録三億円事件 時効成立』で観た、「疲れ果てた中年女」のイメージが強く、若い頃はこんなにも美しかったのか、、と衝撃というか、ショックを受けた。
美しさを奪う時の経過というものは、ほんとに残酷なものと痛感した。
全体として緊張感がみなぎり、まとめ方もうまく引き締まった穴のない作品だが、ミスキャスティングが響き、傑作とまではいかない気がする。
しかし、主演の市川雷蔵はさすがの渋さとクールさ。
やはり時代劇の雷蔵より、現代劇でこその雷蔵だ。
雷蔵出演の現代劇は全て観てみたい。