1.《ネタバレ》 ソフィア・ローレンにアンソニー・クインと、なんとも濃いキャスティング。旅回り一座の座長とその恋人女優という役柄ですが、女優に振り回されるちょっと弱気なクインがなかなか楽しい。ソフィア・ローレンも、どこまで本気だかわからないような天然気味のお色気女優が合っています。この2人は民間人ということで、銃の方はからっきし。そちらはスティーヴ・フォレスト演じるメイブリーの役回りなのですが、こいつがやたらとにやけていてあまり魅力がない。もっとも、脇役ですからそのあたりは考えてのことでしょう。
メインのヒーリー一座は、借金取りやらなにやらから逃げ回っていて、前半は次第に状況が悪くなるばかり。これでどうなるのかと思いきや、意外なことから逆転するという寸法。それもこれもヒロイン・アンジェラのとぼけた性格から来ていて、これがなかなか面白い。一座の人間も個性的でよかったです。メイブリーは結局うまい具合に使われてしまうわけですが、作中では特にいい役回りというわけでもないので、気になりません。むしろ暴力はからっきしのアンジェラたちが、彼をうまく利用して最後には助けてしまうあたりが痛快です。
こうした、主人公たちが暴力よりも口先やアイデアで窮地をしのぎ、最後にはめでたしめでたしとなる話なので、通常の西部劇とはかなり趣が異なっています。むしろ、既存の西部劇のアンチ・テーゼになっているのではないかとも思われます。そう考えると、西部劇のイメージが薄い2人が主役だったり、監督がジョージ・キューカーだったりするのも納得です。なかなか異色な快作でした。
しかしこの邦題、『西部に賭ける女』というよりは、『西部“で”賭ける女』という気もしますが。