2.《ネタバレ》 「どこがありふれんてんだよ!」という突っ込みは別ににしても、とてもよく出来たモキュメンタリーです。この手の題材になると私はどうしても『ヘンリー/ある連続殺人鬼の記録』をどうしても想い出してしまうんですが、本作のブノワはヘンリーと違ってピアノを弾いたりして多芸で饒舌なので雰囲気は全然違います。ペラペラしゃべっていることはもっともらしいけど中身がないたわごとなんですが、ヘンリーとの最大の相違点はブノワにとって殺人とは生活の糧を得るための単なる手段であるということでしょう。つまり猟師が大自然の中で獲物を狩っている様に、都会で殺人を繰り返しているわけです。カネのためだけに無慈悲に人殺しをするというのもとんでもない話ですが、それでも『ヘンリー』よりは理解できるキャラではあります。彼の凶行を記録する撮影クルーたちも次第に犯行をともにするようになってゆきますが、これはクルーたちがブノワの自己分裂した魂の片割れみたいな存在にも見えてきます。でもその中でも一番狂っている様に感じるのはブノワのやってることを知っている恋人や友人たちで、あの誕生パーティのシーンは実にシュールで不気味でした。