2.カラックスが自らの本名である「アレックス」を主人公に与え、前衛的手法と古典的題材でもって「ゴダールの再来」とまで言わしめた、弱冠23歳での長編デビュー作。目元のどアップを画面に被せたり、リズムを切る画の無いカットといった懲りすぎともとれる様々な技法は意識的にヌーヴェルバーグをなぞっているように思う。パーティシーンでの「はじめに言葉ありき」というパーティ客のセリフとアレックスのことをアレキサンデルと呼ぶパーティ主という描写はタルコフスキーの『サクリファイス』からの引用かと思ったら、『サクリファイス』は86年でこの作品より新しいので、タルコフスキーもカラックスも別の何かから引用しているのかもしれません。ピンボールとロックがヴェンダースを彷彿させるのも私の思い過ごしかもしれません。しかし美しいモノクロはノワールを彷彿させるし、見知らぬ男女の回転するキスシーンは(特にアメリカの)恋愛映画を彷彿させます。女の部屋の一面がガラス張りなのはまさにスクリーンを彷彿させます。ラストではそのスクリーンの向こうに観客までいます。ヌーヴェルバーグ、中でもゴダール的に料理した作品だと思いました。瑞々しさよりも痛々しさが上回るところがカラックス風味といったところでしょうか。 //追記(09.6.2)「はじめに言葉ありき」は新約聖書からの引用でした。いやはやお恥ずかしい・・・。