1.《ネタバレ》 冒頭、借り物競争のシーンで上流階級社会の堕落した生活が描かれ、更に家の中での言動や振る舞いにまで彼らに対する侮蔑の念が感じられます。
ただの借り物競争ではなく忘れられた人や物を取ってくるなんて、この時代の映画でよく見られる仮装パーティーなんかもそうですが、夜ごとに遊び呆け普通のパーティーでは飽き足らなくなってこんな馬鹿げた遊びをしているわけですから、ゴミの山に住む人間を対比させるまでもなしに、上流を風刺している事がわかります。
その一方で、「仕事があれば人は人間らしく生きることができる」という労働を尊ぶゴドフリーの台詞や、最後に浮浪者に職を与える彼の行動など、社会的にも優良な映画と言えると思います。
襤褸を纏い無精髭をたくわえていても、ただの浮浪者ではないことはちょっと見ただけで分かってしまうようなウイリアム・パウエルですが、後のバトラーを演じる彼を見るにこれはベストなキャスティングと言えるでしょう。
監督や脚本のグレゴリー・ラ・カーヴァも自分にとっては初めて拝見する作家さんですが、物語の至る所にユーモアを交えた台詞が多くて楽しめますし、またカメラにおいても、バトラーが朝食を立て続けに運ぶシーンを長回しで撮っていたりするところなんかを見ても、きちんと映像にまでこだわりを持つ人なんだなぁと感じさせてくれます。
最後、ゴドフリーが半ば無理矢理結婚させられていたところでは、出来れば求婚を上手くかわして自分の道を突き進んでいってほしい所でしたが、監督が女心を汲むことに長けた懐の深い人物だった、と解釈します。
蛇足ですが、タイトルの襤褸という字は「ぼろ」ではなく「つづら」と読むそうです。