15.《ネタバレ》 -Memphis Belle- “メンフィスいち美しい女の子”乗機B-17の名前。爆撃機には船の“ナントカ丸”みたく名前があるみたい。初視聴はレンタルビデオで、結構好きな映画なんだけど、辛口評価が多いんですねぇ。
B-17の実機が登場するのが目玉。B-17の銃座がどんな位置にあり、誰がどんな任務を担当したのか。そして昼間爆撃とはどんな任務か、どれくらい被害があったかが、この映画1本で解る仕組みになっている。
特撮はリアルとはいえないけど、一瞬で爆散するでなく、また数秒で墜落するでもなく、じわじわと悲惨な最後を遂げるB-17の姿。落ちる機中にも10人の若者が乗っていて、恐怖のなか死んでいく現実。そして最後、自機の車輪が出ないことでどんな惨状が待っているか、冒頭の機体炎上で観せるのも上手い。
戦争を舞台にした青春映画として、若者たちの生きるための精一杯の努力を描いていたと思う。いがみ合っている同士が見せる優しさ、イザという時に見せる勇気。ヴァルが医師の経歴詐称を暴露したり、ダニーが自作のでなくイェイツの詩を読んだことを暴露したりと人間臭い。
戦略爆撃には2通りがあって、ピンポイントで軍需工場とか軍港を爆撃する精密爆撃(敵国の軍事力破壊が目的)と、敵都市を無差別に爆撃する絨毯爆撃(敵国民の戦意喪失が目的)があって、メンフィス・ベルたちの任務は前者。
また当時の連合国はまだ絨毯爆撃はしてなくて(といっても劇中の数カ月後からバンバン落とす)、誤爆とか事故、故意に住宅地に落とした以外、映画のような描写、考え方であっていたと思う。
先導機のウインディ・シティ号が落ち、後任のCカップ号も戦線離脱して、メンフィス・ベル号が先導機に。もし2回目の旋回でも工場が見えなかったら『ここだ!(と思う)』で爆弾落としてたかもしれないし、誰も反対しなかっただろう。
偶然にも雲が晴れて、目標も映画もスッキリとした終わり方。戦争映画でスッキリって表現は違和感を感じるかもだけど、アメリカが創る第二次大戦を舞台にした映画って、戦争の悲惨さとかをテーマにした映画より、娯楽要素の強いドンパチ映画が多かったと思う。本作はイギリス主体で制作されたらしいけど。
メンフィス・ベルは古き良き戦争映画のスタイルに、爽やかな青春映画要素を組み入れた映画で、公開当時はまだ『ベトナム戦争映画は真面目に。第二次大戦は娯楽にして良い。』のような風潮があったように思う。なにせ第二次大戦の連合国は善で、ナチや日本は悪。特にアメリカの力で世界平和を勝ち取った戦争。と考えていたから。
'80年代以降ベトナム戦争のドロドロを描写した映画が増えて、なんか実際の戦争を娯楽にするのに抵抗感が生まれていったんだと思う。
空気を読まずに完全娯楽作として作られたパールハーバーが、戦争娯楽映画にとどめを刺した印象。