1.ヴィダー監督が音を得て、まず黒人音楽こそアメリカの音だ、と判断したのは正しい。この時代にそう判断するのが、どの程度画期的なことだったのか分からないけど、ジャズの時代にそれ以前の音楽に注目し、スクリーンを黒人で埋め尽くしたのは凄いことなんじゃないか。少年たちのタップ、霊歌ふうのコーラス、ほとんど音楽映画と言っていい。熱狂している中を主人公の男が踊り子を追ってこちらへやってくるあたりは、鬼気迫るものがあった。あとはラストの無言の追いかけ。実に粘っこい。小細工のない監督、骨太の世界。沿道でのののしりも、変に堂々と続く。その彼女がしだいに引き寄せられていく感じ。簡単に言ってしまえば、一つのシーンに掛ける時間が長いってことなのか。聖人伝説的なタッチがあった。