2.冒頭、スパイと成った市川雷蔵演じる椎名次郎は、北京に向かって朝鮮半島を北上している。
きな臭さが立ち込める時代、いよいよ“スパイ・椎名次郎”の暗躍が始まるのかと高揚感が生じる前に、主人公は本国に呼び戻される。そして、神戸港で相次ぐ輸送船の爆破事件の調査を命じられる主人公。地元の憲兵と衝突しつつも、首謀者を暴いていく。
スケール的には小規模なストーリー展開にまとまったシリーズ第二作。
ストーリーテリングとしてもそれほど際立った驚きはなく、ジャンルムービー的に展開し、良い意味でも悪い意味でも落ち着いて観られる作品に仕上がっている。
そんな中、見どころとなるのはやはり「市川雷蔵」その人だろう。
前作で自らの人生を捨て去り“スパイ道”を邁進することを決めた主人公・椎名次郎の能面のように美しい無表情が、二作目にしてもはや癖になる。
徹底されたポーカーフェイスの中にさりげなくも絶妙に表れる怒りや悲しみ。垣間見せる人間らしい感情を瞬時に押し殺す椎名次郎の葛藤こそが、この作品の味わい深さの肝だろう。
また今作においては、スパイ活動の中で演じ分ける大阪商人ぶりも見逃せない。
軽薄な商社マンになりきって、反逆者の懐に入り込むシーンは、国産スパイ映画ならではの面白味を、市川雷蔵の芸達者ぶりとあわせて楽しめる場面だと思う。
さてこれから主人公が、開戦前のきな臭い時代をスパイとしてどのよう生きていくのか。
また幾つもの屍を乗り越えて、椎名次郎は、スパイの道を歩んでいく。