1.なんとまあ、皮肉の利いた作品だこと。というのがまずは観ての感想でして、この時代って、確か日本では敗戦直後ですよね?戦争によって失われつつある人々の自由というものを強烈なまでの風刺を込めて、描かれているのが凄い。作品全体としては傑作とも思えないし、同じ監督なら「本日休診」の方が私は好きだけど、これはこれでなかなか面白かった。高峰三枝子の嫌な妻ぷりと佐分利信の駄目っぷり、何だか小津監督の「お茶漬けの味」の中の佐分利信でも見ているような気がした。こういう役を演じさせると佐分利信は本当に上手いし、また、そういう役がよく似合う。他にもどの俳優にしても良い味、出してました。笠智衆の切れる姿と東野英治郎のとぼけた味わい、それにほんの少ししか出番のない杉村春子の相変わらずの上手さも強烈な印象を残す。佐田啓二と淡島千景の若いカップルも忘れてはならない。特に淡島千景が素晴らしい。この頃の淡島千景って妙に色っぽいのが気になって仕方ない。この作品を観て淡島千景にドキッとしない男がいたらそいつは男じゃないと言いたくなるぐらいの色気がある。とりあえずは初めてということで7点にしたけど、もう一度観たらもしかしたら8点になるかもしれない不思議な感じの残る作品です。現時点では限りなく8点に近い7点ということで、この作品に対するレビューを終わります。