1.淡々と続く雪中行軍、そしてこれまた激烈ながら、どこか乾いた戦闘シーン。何だか無愛想で、それだけに映像はしっかり目に焼き付きます。当時の製作者の意図がどこにあったにせよ、国や時代によって受け止め方も異なり、今の我々が観れば、この映画から感じ取るのは厭戦気分。よってこれも立派な反戦映画。部下を危険な前線に追いやり、たまたま生き残った者には「よくやった」と、勲章をポイポイッとくれてやる。うーむ、まさに現代の企業における成果主義とそっくりではないか・・・(ブツブツ)。ところで、この映画、音楽を担当しているのは、20世紀を代表する大作曲家---と言っていいのかどうか最早よくわからなくなった---あのシュニトケですね。私も一時は彼の作品のCDを買い集めたり、彼の曲が取り上げられたコンサートに足を運んだりしたもんです。この映画の作られた72年と言えば、まだ彼が「多様式主義」へと足を踏み入れて間もない頃(丁度、音楽院の教職を退いた年でもあります)。彼の代名詞とも言うべき合奏協奏曲シリーズもまだ作曲されていない・・・。彼の曲と言えば、「交響曲○番」とか「弦楽四重奏曲○番」とか言う、いかにも絶対音楽っぽい、愛想の無いタイトル(?)が思い出されるわけですけど・・・内容的にはむしろ標題性が強く感じられるのは「多様式主義」の必然なのか(彼の交響曲からは、何となくショスタコの4番を連想してしまう)。そもそも彼は、そういう絶対音楽モドキの作曲者である以上に、かなりの時間を映画の仕事に費やした、映画音楽作曲家でもあるわけで。むむむ。あの「多様式主義」ってのは結局、有調無調何でもゴザレの、“映画サウンドトラック的音楽”に過ぎなかったんではないのかい、と思えてきちゃう。そう言うと何だか安っぽい。でも確かに、その安っぽさに、私が惹かれたということも認めざるを得ない。彼の作風もまた当然のごとく変化していき、私も戸惑いつつ、それを受け入れつつ、しかし結局は彼の音楽から遠ざかっていっちゃった。そして彼はすでにこの世にはいない。シュニトケの音楽は今後、どのように評価されていくのか。一時のモテハヤサレぶりはやはり過大評価だったのか、それとも映画音楽と純音楽を結ぶ記念碑的な作品群として再注目を浴びるのか。この映画の音楽を耳にしながら、改めてそんなことをフト思っちゃったりしたのです。