6.《ネタバレ》 前半のゴルフのシーンで、カップイン寸前のところで犬にボールをかっさらわれるシーンが本当にアッという間の出来事で笑ってしまって、しかもその犬がボールをコレクションしていたりして、ここでもクスッとなってしまいます。
敵をバッタバタと続けざまに倒していくシーンなど普通に面白いギャグが出ていた中で、必見はズバリ所長室で大男と戦うシーンでしょう。
キートンが後ろに吹っ飛ぶアクションは、出来るだけ飛ぶ距離が大きい方が当然笑いも大きくなるわけで、よく見ると殴られた瞬間に5,6歩後退りしてから自力で後ろにダイブ!という何とも滑稽極まりない姿・・・なんですが、平面のスクリーンに奥行きを感じさせようとする努力の跡が感じられるのはちょっとした注目ポイントで、キートンが殴られたことによる笑いと同時に「う~ん、流石キートン!」と唸ってしまうような要素とが入り混じっていて、非常に面白いシーンです。
「この時代にしては凄い」だとか、「ゥン十年も前の映画でナンタラカンタラ」とかいう表現でレビューするのって馬鹿げていると思っている自分としても、今回だけは言わせて頂きたい。
カメラを動かしてポジションやアングルを変えてみようとする発想がようやく根付いてきたこの時代に、画面に奥行きを出そうとする意識を持っていたのは、キートンが時代の先を行っていたということの表れでしょう。
3D映像で奥行きなんかエンジニアの腕ひとつでどうにでもなる現代の映像作家たちには、是非ともこういった工夫を凝らす姿勢を見習ってほしいところです。