4.《ネタバレ》 ユニークな構成かつハートウォーミングなテイストに仕上がっており、思ったよりも楽しめる作品だ。劇的なストーリー展開や驚くような感動的なオチもなく、不満な部分も多々あるが、二つのストーリーを上手く編集し組み合わせることで、それほど飽きることなく鑑賞することができる。
女性が書いた原作作品を女性監督が監督したことで、女性が女性らしく描かれている。
単調な仕事の中で自分の人生に疑問を持ち、何かで埋めようと必死になる姿や、時にはポジティブに、時にはネガティブに振舞う姿や、わがままで自己中心的、負けず嫌いで自分勝手な姿など、作り物ではない等身大の女性の姿が描かれているように感じられた。女性の観客は彼女たちをより身近に感じられて、自分も頑張ろうという気持ちになれるのではないか。
そのような妻たちを支える夫たちにはそれほどスポットが当てられていないが、要所要所で彼らの優しさが垣間見られるように製作されている。料理に没頭する姿にそれほど文句も言わずに、ひたすら付き合い、甘いケーキにはつまみ食いをして無言の励ましや賞賛を与えつつ、時には適切なアドバイスを送るという夫の鑑のような存在だ。
逆に、落ち込む妻たちをなんとか励まそうと努力しても、夫たちの苦労も知らずに“ピザ屋の2階”“パリに戻りたい”というような無神経なわがままを言ったりもする。
しかし、この辺りが個人的には非常に上手いと感じられた。
現実の人間は“聖人”ではなくある意味では“自分勝手な存在”なので、よりリアリティ度が増すように計算されている。
ジュリーに対するジュリアの誤解の件がやや尻切れになっているが、完全に美談にしたくはないという想いもあったのだろう。途中で彼女をネタにするようなコメディアンのシーンを盛り込んでおり、このような類と彼女が誤解したのではないかという想像させるようになっている。コメディアンのシーンも計算して盛り込んだように思われる。
それにしても、ジュリアの書物がジュリーに影響を与えて、ジュリーのブログが読者に影響を与えて、読者となった新聞記者の記事が出版業界に影響を与えて、出版物が映画界に影響を与えて、そのようにして出来た映画を我々が鑑賞するという流れは非常に不思議な気持ちになる。時間や空間を超えて一つに繋がっているということを改めて認識させられる。