1.《ネタバレ》 終末を迎えた世界を、或る“ウォーカー(旅人)”が一冊の「本」を持って、ひたすらに西へ向かう。
デンゼル・ワシントンを主演に、そしてゲイリー・オールドマンを悪役に迎えたそのイントロダクションは、ミステリアスで、「一体どんな映画なのか」という一点に興味は集中した。
描き出された映画のプロットは、まるで将来有望の若手映像作家が低予算で創り上げたようなストーリー展開で、良く言えば「純粋」で、悪く言えば「稚拙」だったと思う。
“素材”がそのまま「信仰」に繋がるものなので、無信仰者にとっては一歩引いて観ざるを得ない部分はあり、作り手の意図ほどは映画の世界観に没頭することは正直なところ出来ない。
となると、映画の核心となる「本」がどういうものなのかということも或る程度容易に想像できてしまうだろう。
そういった「本」の謎の部分を、この映画のハイライトとして捉えてしまうと、少し肩すかしをくらってしまうかもしれないが、この映画が描きたいのは、そういう安直なことではないように思う。
理由は明確にはされないが、恐らくは人類の「愚行」によって退廃した世界。その“滅び”に対する「信仰」の意味と価値。
無信仰の者としては、一概にその一つの「信仰」を崇拝することは当然出来ない。
ただ、その一歩引いた立場だからこそ、人類における「信仰」の素晴らしさと危うさを感じることが出来た。
非常にパーソナルな価値観だが、そのことがこの映画の最大の価値なのではないかと思った。
見方によって評価は揺れる作品だとは思うが、終末感を描き出した映像センスも含めて、一定の完成度の高さを感じさせる映画だと思う。