1.《ネタバレ》 一握りの大金持ちだけが健康な食事にありつけ、他の人々は購買可能な有害食品で命をつなぎつつ毎日体内に有毒物質を蓄積していく・・・そんな近未来SF風の世界観を想像してみたことのある人は、きっと僕以外にもたくさんいると思う。そういう世界は想像するよりはるかに早く近づいているのではと思うこともある。この映画を観て、それはもう既に始まっているのだと感じた。スーパーで豆腐や納豆を買うとき「昔騒がれた遺伝子組み換え大豆のことは今どうなっているんだろう? あれから特に何の話も聞かない」と、よく思う。この映画はジャーナリズムがやらなければならないことを、きちんとやってくれていると思った。本当はこうした話題が日常のテレビの中であるべきだと思う。突然話題が変わるようでなんだけど、生物の遺伝子は多様性があって、そのおかげで危機的環境異変があっても特定の遺伝形質が生き延びられたりして種が保存し続けられるという。もし多様性が失われ1つの形質だけで栄えていくと、そいつらは危機的状況を受けたときに全滅することになる。そのことを考えると、食品の遺伝子そのものの問題ももちろんだけど、たった一企業が世界の食品生産を牛耳るという状況は極めてデンジャー。そういう状況を手助けしてしまう政治は悪政だと思う。しかも、そういうシステムによって蝕まれているのは健康だけではなく、労働環境も自然環境も精神衛生も破壊しているということに、この映画は気づかせてくれた。マイケル・ムーアのトリックスター的な悪ふざけや問題提起して投げっぱなしなのに比べて、非常に良質に感じたのは「健全なよい食品を要求してくれればアイディアを尽くして必ず届ける」と誓う一農夫の心を映してくれたラストカットと「システムを変えるチャンスが1日に3回ある」と具体的な行動案を示してくれたところ。そういえば『買ってはいけない』という本が話題になったことがあるけど、その本の情報にも問題が多々あったとか・・・この映画はどうなんだろう? と考え出すと真実はややこしいかもしれないけど、少なくとも自分が買うものに意識を向けることは大事だと思う。体調や気分が優れないなーと感じるとき、それは意外と日々の食べ物の影響だったりしないか、まじめに気になる。