1.タイトル通り、吉祥寺人のための映画といっても過言ではないが、それを無視しても、一ひねりしたストーリーと、小気味よい演出がこの映画を単なるローカル映画に陥ることから救っている。私は吉祥寺周辺に住んでいるので、どこもかしこも吉祥寺ばかりで、そういう人が観るとそれだけで満足できるかもしれない。しかし注目したいのはほのぼのとした雰囲気に似合わぬ毒があることだ。これは身構えて観るとすぐに分かってしまうと思うので、身構えない方が賢明だろう。「あれ?どういうことだ?」と思うシーンが氷解するラストはなかなか秀逸である。キネマ旬報など映画、演技関係の本がラストに本棚に戻っているのは上手い。献血から子ども、そして鼻血という「血」のつながりも洒落ている。観終わってから、「あの場面ではどういう気持ちだったのだろう」といろいろ考えると面白い。90分にしてはそれなりに満足できる映画であった。ところで、遠野とはやはり武蔵野市の友好都市である岩手県遠野市からとっているのだろうか。なかなか凝っている。