1.《ネタバレ》 私の世代だと高橋幸治氏といえば、幼い頃観た大河ドラマ『黄金の日々』での織田信長役!これに尽きます。まるで、天才児信長を演じる為に役者になられたようなイメージの方。ここでも喜怒哀楽をあくまでポーカーフェイスで最後まで押し通す、私の中のイメージ通りの好演技。いわゆる大映現代劇印特有のネットリしたオハナシなんだけれど、増村監督十八番の、一種乾いた演出の功で見応えある面白いプログラムピクチャーに仕上がってました。「清く正しく美しく」がモットーの嘘が許せない理知的な本妻、対照的な奔放で感情的な浮草その日暮らしの元カノ。最初、若尾文子と岡田茉莉子の配役、これ、あべこべなんじゃないかと思ったけど、全くの杞憂でした。どちらもホントお上手で、大女優演技対決は引き分けといったところ。いや、既にこの時期、増村&若尾コンビは話題作問題作を連発していたから、アウェイ側の岡田茉莉子に軍配を上げたいくらい。殺人事件なのに、警察の捜査体制がとろくさいというか、有り得ないほど愚鈍な点には敢えて目を瞑ります。有能だと逆にハナシが成り立たない展開だし。場の賑やかしみたく、扇情的に姿態を晒しまくる江波杏子も良い味出してました。この当時って、羽田-大阪間午前2時発の深夜航空便が存在してたんですね、殺人アリバイトリックにこの移動が絡むのかと思いきやあっさり解決したので、ビックリ。