1.《ネタバレ》 現代パートでの資金難とか家庭不和といった障害はある程度台詞での処理に頼らざるを得ないだろう。
その辺りの淡白さを補うかのように、過去パートの脱出劇がサスペンスと緊張に溢れている。
裏路地で逃亡を通報する者。咄嗟に逃げ道を指示し、手助けする女性。通りの群衆の中で、追う者・追われる者・味方する者・妨害する者、
それぞれの視線が交錯し、スリリングなアクションを形作っている。
出国手続きの受け答えの中で、声を上ずらせながら懸命に機転を利かす若きヒロイン(タチアナ・マズラニー)の気丈さが心を打つ。
弁護士の弁論から大団円まで、クライマックスの調停シーンは裁判映画の型通りの流れだが、それで万々歳とはならない。
その次の場面に訪れる、過去と現在ふたりのヒロインの涙とそれぞれの抱擁が美しい。
その繋がり合いはヘレン・ミレンのチャームあってのもの。メリル・ストリープではこうはいかない。