4.《ネタバレ》 口コミで全米ヒット、の煽り文句には眉唾つけたくなるのが習性なので期待値はさして高くなかったんだけど、これがなかなかでした。画の見せ方が独特で、しーんと冷たいのです。冒頭の、定点カメラで撮ったようなシーンとかデパルマを彷彿とさせるぐるぐる回転カメラには引力がありますし、かと思えば思わぬタイミングで場面が切り替わったりもする。そこはかとなく不気味な思わせぶりな描写も多い。これは一体?と考える間もなく話は進むあたり、リンチにもちょっとだけ似てます。
POVでもないのに、一連の事件をその場で傍観しているようなリアリティがあり、その要因のひとつとしてアメリカの地方都市に住む現代の若者の生態をとても正確に写していることがあります。主人公ジェイはいつも仲良しの友人らとつるんでいる。幼なじみや妹らで、世界はとても狭い。バイト先は地元のアイスクリームショップ。ひまを持て余して友人の家でだらっと見るでもなくDVDを流す。(これがかなり昔の白黒特撮とかで、チョイスも微妙)親がいる時はバルコニーでカードゲームしながらビール。ぱっとしない。20年前ならばアメリカの若者にはマストだったであろう自動車は、もはや持てない時代。娼婦が街路に立つおっそろしく寂れた郊外。この荒れ果てぶりは絶句するレベルで、トランプが大統領になぜ当選したのかなんとなく分かります。
まさに「今」を切り取った画のなかに、音楽や絶叫を極力入れずひたひたとしつこく「それ」を置く。並みのホラーなら「それ」の弱点を探ったり、起源を遡ったりするところだが、超絶リアルな今作は、そんな手間も知恵もジェイとその仲間には出せません。感電作戦も失敗。
”新感覚ホラー”という使われすぎな言葉が、これにこそぴったりな低予算な意欲作。お時間があればぜひ。