1.《ネタバレ》 同胞のガス室送りを手助け・後始末をしている"ゾンダーコマンド"の存在を初めて知った。
監督はかつてタル・ベーラの助監督を務めた影響か、スタンダード比率で寄り添うような主観の長回しが、
主人公の視野の狭さ=見たくない光景とリンクして、閉塞感と混沌の中に放り込む。
この二つが、飽和状態のホロコースト映画に新しい切り口を入れる。
ぼかされた死体の山には目を背けられるが、絶命の叫びからは逃れられない。
そしてその状況に慣れてしまった自分がいる。
だからこそ、死んだと思われる息子(という設定)を
自分を保つための理由づけにしないととても生きていけないだろう。
最後は撃たれるだろう彼の笑顔が、新緑の森に冴え渡る鳥の鳴き声が、
無機質なアウシュヴィッツ収容所と対比して寓意的に映る。
敢えてやっているかもしれないが、凄惨さと絶望度ではまだ足りない。
この撮り方がなければ、全く話題にならなかったかもしれないのだから。