4.E・M・フォースター×アイヴォリー第3作。 不遜なウィルコックスが幅をきかせているせいで非常に不愉快な映画だが、冷厳な階級意識とそれに柔軟に対応する精神を見てとることはできる。(フォースターは英国に存在する「壁」とそれを越えようとする人間を書いた) 翌年の「日の名残り」では惹かれあいながら結ばれることのないアンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンが、心の離れた夫婦なのが面白い。 鷹揚なマーガレットは二つの世界を身をもって繋ぎとめるが悲壮感はなく、そこに居場所を見出すことを当然と受け入れる潔さ。 ヘレナ・ボナム=カーターは「眺めのいい部屋」につづいての奔放な令嬢、「モーリス」ジェームズ・ウィルビーも姑息な嫡男として重要な役割を果たす。 嵐が吹き荒れた後事態は収束し収まりがつくのだが、惜しむらくはキャラクターの内面描写が十分とはいえず展開に性急さ・不自然さを感じるのと、フォースターの小説同様誰もが共感を感じられるような万人向けの内容ではないことか。 英国の「家」に対する感覚は独特である。