1.《ネタバレ》 YouTubeにもあるがU-NEXTで見た。世間ではシン・ゴジラとの関係で受け取られているようだが、単純に怪獣映画として見た場合に問題なのは、劇中政府にとって保管施設の建設に何の得があるのか不明なことである。また主人公が、怪獣であるからにはどういう危険があるかわからない、という点にひたすらこだわっていたのもあまり説得力がない。 しかし見ている側が頭の中で、怪獣→原発と完全に読み替えれば言いたいことはよくわかるので、要は怪獣映画の形を借りた社会批判の映画という方が実態に合っている。製作時点ではまだ2011年の原発事故が記憶に新しかっただろうから、こういう映画を作るのはけっこう度胸が必要だったのではないか。
この映画では「原発」を「怪獣」の姿にした上で、地方に突然降ってきた原発立地の話を海洋生物の漂着(ストランディングstranding)に喩えている。悪くないと思ったのは地元民の描写であって、突然国から押し付けられたことへの対応をめぐり、立場や考えは違ってもみなそれなりに地域社会のことを考えていたが、住民が何を言っても考えても結局は落ちるところに落ちるしかないという無力感も出していた。町長も気の毒な立場だったように見える。 また「建屋」という言葉が原発事故の報道でよく出ていたこともあり、個人的には単純に原発の新設を扱った話なのかと思っていたが、しかしU-NEXTの映画紹介を見て、なるほど高レベル放射性廃棄物の処分地選定でも今後こういうことがありうるわけだと気づかされた。候補地の皆さんは心してこの映画を見た方がいい(「100,000年後の安全」(2009)も見た方がいい)。 なお2025年の現在でいえば、地域環境への影響が懸念される大規模な再エネ発電施設(洋上風力含む)も同様ということになる。グローバルな社会正義が武器にされるのは困ったものだ。
[付記1]動物の死体は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第6条の2第1項の規定により市町村が運搬、処分しなければならない。怪獣ともなると劇中の町単独では厳しい負担だろうが、劇中政府はその費用について同法第22条などにより町を支援するわけでもなく、代わりに交付金(原発の立地交付金のようなもの)を餌にして迷惑(有害)施設を押し付けたらしい。いわゆる飴と鞭ということだ。 ちなみに、ただのクジラの場合なら2023年の大阪市による処理費用が8019万(海洋投棄)、2024年の大阪府の費用が1507万(埋設)という事例があるが、大阪市が高すぎだと批判されていた。 [付記2]単純に怪獣映画として見た場合、この映画の怪獣はクジラに手足がついたようなものだったらしいが、これは1954年のゴジラが「海棲爬虫類から陸上獣類に進化しようとする中間型の生物」だという説明の「爬虫類」を「哺乳類」に変えたようでもある。 【かっぱ堰】さん [インターネット(邦画)] 7点(2025-04-19 12:55:17) (良:1票)《新規》 |