1.《ネタバレ》 原作は未見。ほぼ事前情報なしで試写会にて鑑賞しました。
孤独死という近年深刻化しつつある問題を、コメディ要素を採り入れることでカラッとしたタッチで描きつつも重く受け止めた佳作ですね。個人的に過去に同様の業務に関わっていた時期があるので、主人公のキャラが濃いので多少なりともデフォルメされているようでいて、かなり現実的に描かれた作品だと思います。
主人公の牧本氏が現在に至るまでの人生は省略されているので、決して生きることに器用ではない彼が何故一人暮らしをしているのか。何故身銭を切ってまで孤独死した人々に入れ込むのか。個人的にはその辺りの背景を少しでも描き込んで欲しかったところです。
今までも、保管せざるを得ない骨壺の数だけ、沢山の様々なケースを見送って来た筈なのに、何故最後の1件にだけ深入りしていったのか。1枚の写真が彼にそれ程までに訴えかけたこととは何なのか?係の廃止が決まる前に関わったケース。決してそれが理由ではない筈。説明過多は野暮なことかもしれませんが、もう少しだけ背景が知りたかったなというのが正直な印象です。
それから、終盤の展開は伏線回収的に何となく読めてしまいました。そして、主人公にとってこれがある意味でのハッピーエンドなのだとすれば、彼の人生をもう少し知る必要があるのかも知れません。
少々不満的な意見を書いてしまいましたが、感動のヒューマンドラマであることは間違いありません。生きるのに不器用な牧本氏の残したものについて、観終わった後しばし考えさせられました。