1.《ネタバレ》 久しぶりのTF超大作。
本作はベイ監督の5作とは異なる世界線の「バンブルビー」の続編、かつ2007年に公開された「トランスフォーマー」の前日譚に当たるという立ち位置の良く分からない作品だ。(一応ラストでベイ時代の音楽と終了フォーマットを踏襲している。)
とはいってもベイが監督した5作品の時点で矛盾も多く、良く分からん世界観だったのも事実。
もう、TFはそれでいい。
今回も出されたTFを余すことなく楽しもう。
本作はタイトル通り、TFのアニメシリーズであるビーストウォーズをフィーチャーする。
ビーストのアニメは空前の大ブームとなったので、これは当時の子供たちにも刺さるだろう。
感想としては個人的には大いに楽しめたが、色々と歪な面も感じる。
再撮影や、カットされた多くのシーン、TFとしては短い上映時間…
本作が色々な思惑の元、当初の予定とは異なる形で世に出たことは想像に難くない。
結果から言えば、作風や上映時間の調整が行われており、ドラマの性急さ、ルール説明の曖昧さを感じたことは事実だ。
本作はオプティマスがリーダーシップを取り戻すまでの物語が主軸。
監督も言及してたが本作のオプは、鋼鉄の判断力と思慮に富んだいつものオプではない。
実際、あまりに怒りっぽいオプの姿に驚く。故郷へ帰ることができず、仲間への責任を背負い込んでいるのだ。
これは面白いと思うが、正直なところセリフベースの説明では物足りなさを感じるところでもあり、実際、本作にはカットされた異なるオプ主体のオープニングもあった。(Youtubeにあります)
やはりセリフでの説明では、最低状態のインパクトが薄く、成長物語であればこそ、変化の緩急は強調してほしいものだ。
他にもテンポのよさの弊害として、トランスワープキーやユニクロンについても説明が曖昧に感じる部分があり惜しいと感じた。
しかしながらこの辺り、ドラマや設定は頭の中で補足していけば楽しめると思う。
他に本作の長所もたくさんあった。
ノアとミラージュの友情が熱い。
弟に付与した設定も良い。
ソニックとテイルズ(当然ゲームが元ネタだ)という名前を与え、本作のキーワード=チームを連想させる。困難なクッパ(この時代のGBには登場しないと思うが)の攻略に挑む姿はそのまま闘病と重なり、ノアの知る以上のガッツを描写する。
モア・ザン・ミーツ・ジアイ=目に見える以上の力、すなわちTFシリーズが秘めるメッセージだ。
エレーナとエアレイザーの絆もいい。
エレーナの才能を、翼をもった隼が外の世界へと解放していく。
ノアとミラージュ程あからさまなパートナーとしては描かれないが、明らかに二人が意識しあっていることが分かるのが良い。
ちなみにホイルジャックとの合流場所はサクサイワマンという遺跡だが、これは「満腹の隼」の意。遺跡の名はビーストが古代人に与えた影響の名残なのだろうかと、とんでもない考古学を考えてしまったりする。
一番良かった点、これはTFのカッコよさに尽きる。
オートボッツのデザインは過去イチで好きかもしれない。
「バンブルビー」とベイ作品の移行期のようなデザインが良い。
アーシーは格段に可愛くなっているし、F1に変形しない(一瞬しますが)ミラージュも鑑賞してみれば魅力的に見えた。
ホイルジャックに関しては前作でアニメ準拠の姿で登場したのに、なぜ今作で南米かぶれメガネになったのか謎。
その出自が全く語られなかったスカージにはびっくりだが、初戦でオプを圧倒する悪役ぶり痺れた。他のテラーコンズの面々もヴィランとして映画を存分に盛り上げてくれた。
惜しいのはユニクロンか、せっかくの惑星捕食がほぼないため、設定以上の怖さが感じられない。さらには援軍要請にクソザコサソリ軍団を投入するポンコツぶりで、結局テラーコンズは実質3人でTF達の連合軍と戦う羽目になっているから可哀そうになる。(モブ軍団が弱いの)
ユニクロン少々は残念だが、TFのカッコいいいシーンはたくさんあるし、オートボッツ集合シーンは、まるで実写一作目を観た時のようなワクワクを感じた。大人になったビースト世代だけでなく、本作が初めてTFに触れる子供の心に残ってくれると嬉しい。
本作は監督が本来取りたかった映画とは違う状態かもしれないが、夏の大作としてはテンポの良い本作が正解にもなるのかもしれない。
つるべ打ちのアクションに彩られた一大冒険活劇、その中に活写されるトランスフォーマーたちのカッコよさ。
実写版1作目の精神へと繋がっていく久しぶりのTF映画は、子供たちの期待を裏切らないだろう。