1.《ネタバレ》 邦画モキュメンタリーホラーの第一人者、白石晃士監督作品。聞けばOVシリーズの劇場版だそうで。白石監督といえば、個人的にはZが付く前のももクロちゃんが『シロメ』でお世話になっており大変感謝しておりますが、作品の評価はまた別の話。積極的に探して観る程ファンではなくずっとナチュラルにスルーし続けてきました。今回鑑賞したのはたまたま。観終えてから監督名を確認した次第です。
率直な感想は予想以上に面白い。いや一周して面白い!でしょうか。 POVモキュメンタリーなのにしっかりオカルトSF。劇場版プリキュア要素までぶち込む悪ふざけ。胡散臭いのにドラマは熱いという謎仕様。さらにツッコミ待ちのボケなのか奇妙な描写がちらほらと。
例えば赤い女。手に持つ武器は何処で手に入れたのですか?ナタや包丁ならいざ知らず、ククリナイフってマニアックな。黒い男の所持品を奪ったのでしょうか。ちなみにアップで刃があるようには見えず、毎度事件でお馴染み「バールのようなもの」ならぬ「ククリナイフのようなもの」の可能性あり。服を切ってたから刃があるって?刃があっても、あれで服が切れるわけないですやん。ウソですやん。むしろ赤い女の超能力ですやん。「ククリナイ フ」ではなく「ククリナイフのようなもの」だとするとコスプレのプロップか何か。このあたりはフェイクとはいえドキュメンタリーなら拘って欲しい細部かと。でも武器にならない武器を持っていると思えば、赤い女がより不憫に見えるかもしれません。極めつけは宙に浮かぶ異型の者。おそらく赤い女が宿したものの、産まれ落ちる事なくこの世を去り物の怪に転生した子。赤い女と共に次元の狭間を彷徨う内に世界を破滅させるほどの力を身に着けたのでしょう。うーん。何だそりゃ。ここで問題なのはビジュアル面のクオリティです。ディープフェイクで本物と見紛う偽動画が出回る昨今、あまりと言えばあまりな出来栄え。単に低予算だからでは済まされぬ監督の明確な意思を感じずにはいられません。かつて『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』がガチ過ぎて本物か偽物か物議を醸した事を反面教師に、一見して偽物と判別できる低品質なCGをあえて採用しているのだとしたら・・・。監督の高いコンプライアンス意識に脱帽するより他ありません。要するにエンターテイメント万歳ってことです。ストレートにホラーとして楽しむ(怖がる)のではなく、斜に構えて面白がる作品なのは間違いなさそう。それがモキュメンタリーホラーの正しい鑑賞作法であります。