1.《ネタバレ》 ジャッキー・チェンの新作は「原点回帰」が感じられる快作で、ゴールデン洋画劇場で彼の映画を楽しんでたファンにとっては満足の出来。始まってすぐに流れ出す彼の名演集で、観客には主人公ルオ=ジャッキーの経歴が重なってくる。度重なる怪我で生命の危機にもあった。子供との断絶、という劇中の設定も実生活で家庭を省みなかった事を心から反省している、とインタビューで述べた彼の心情の投影なんだろう。そんな苦境にあっても彼はファンの為に身体を張り続けた、そしてこれからもショウビジネスに携わるんだという決意というのか気概が見受けられる点、我々はわかってるから胸にくる。でもって「いかに自分をかっこ悪く見せるか」というジャッキー映画王道のドタバタなコメディ演出。動物をバディとしてる事もあってお約束がてんこ盛りなんだけど、もう老成の域にまで達した感があり楽しい。あと個人的には彼自身の演技力、特に哀愁の醸し方が抜群に上手くなった気がする。...映画の感想としてはここまで。そしてもう一点強調したい。私があえて吹替え版で鑑賞したのは昨年声優業を引退された石丸博也氏のたぶん、ラストジャッキーになるから。80年代の映画吹替えのフィックスとして石丸氏=ジャッキーは最高の贅沢であった。日本でジャッキー映画が大流行したのは彼の演技力が付与してたのは間違いない。凄いのは石丸氏の演技が愛嬌が目についた青年期~苦悩が伝わる老年期に至るまで、正にジャッキー本人いやそれ以上なのではないかという印象を何十年にもわたって映画ファンに提供し続けた事。(だから「ザ・フォーリナー 復讐者 (2017)」などは吹き替えでしか見れんかった) 多分石丸氏も吹替えをなさっていてご自身と重なるものがあったのかな、昔の様な声とは程遠いかもしれないけど枯れた味わいの良さというのか、スクリーンで堪能しました。という事で兜甲児もいいけど、ジャッキーもね。 この後ジャッキー映画を担当なさるであろう声優さんにエールを送りつつ、最大限の感謝を石丸さんに贈りたいと思います。んとうに、有難うございました!