2.ヘリウムガス位で派手な面白さはないけど、不思議と優しい気分にさせるいい作品だと思う。
特にダニーの「人間像」「芸人に対する愛情」「人生観」が素晴らしい。
昔は漫談家だったダニーだが、今でも芸人時のクセからか誰に対しても年齢を聞くことは忘れてないし。「一言言わせてくれ」(「説教でも冗談でもなく」ヴァージョンもあり)という決めゼリフや叔父や知り合いがいった名言を多用するような点を見ると、彼は本当に「笑い」が好きなんだなと感じさせる。
マネージャーではあるけれども、心のどこかではまだ舞台を夢見ているのかもしれないと感じさせる部分はあった。
そして全く売れない芸人に対する愛情が溢れていると感じさせる。自分のことのように熱心に売り込み、そして恩を仇で返すように裏切られ、それでもまだ彼は必死に芸人を売りこみ続ける。そんな彼の性格がにじみ出ていたし、彼が開く感謝祭もまさにそんな雰囲気が感じられる。
バーニーダンを犠牲にしたのも、彼が旅行中と思っていたからであって、別に単なる売れないどうしようもない芸人だから巻き添えにしたのではない。あの感謝祭に彼の姿があったのも少し嬉しくなる。
さらに彼の人生観だが、「人生に笑いが必要だが、ある程度苦しみも必要だ。」というのは本当に名言だと思う。
「スター、スマイル、ストロング(=3S)」を合言葉に常に「自信をもて」と芸人に勇気付ける姿は惹かれるキャラクターだ。
負けイヌでもいい、一夜にして英雄になれる可能性があるのだからと言い切るところには「夢」を諦めない強さを感じさせる。
一方、ストーリーとして少し物足りなさを感じさせるのも事実だ。
ストーリーのオチとしては、ティナとの友情が「根」にあると思われるのだが、ダニーとティナの二人の逃避行が面白い部分はあるものの、それほど心に訴えるものが少ないように感じる。
ティナが感じる「罪悪感」がもっと感じられるようにした方が良かったのではないか。
ティナとの逃避行の中でダニーがルーへの熱い想いをどこかで語るような部分があればティナの罪悪感を感じられるはずであり、もっと映画としては引き締まるように思う。