4.《ネタバレ》 タイトルを見れば分かることだが、前作のような哲学的なテーマには挑戦せず、今度こそは普通の対戦型SFになっているだろうと思っていた。
そのため、80年代という時代背景を考えれば、今のSF作品を見慣れている自分にとっては恐らく見るに耐えないレベルの低いものになるのではないかとタカをくくっていた。
しかし、予想に反して、意外に面白いと感じられて、この世界観に引きずり込まされた。
80年代において、このクオリティ、壮大なスペクタクル感、人間模様、激しいバトルを描くことができるというのは、流石は人気シリーズだけのことはある。
日本においては、他のSFの陰に隠れてしまったことが、もったいない。
このシリーズは過去に一度も観たことはなかったが、シリーズを全部観てもいいかなと思わせるほどに、楽しむことができた。
カーンとカークの過去の関係についてはテレビ版で深く描かれているようであり、本作ではあまり語られていないので完全には理解できないことは残念だが、この程度ならば「過去に何かあった」ということだけを感じ取れれば、問題ないだろう。
“規則”とそれだけに囚われない“直感的な行動力”の重要性についても本作のテーマになっている。
“直感的な行動力”がカークの勝因であり、またカーンの敗因だろうか。
常識に囚われない発想こそが、冒険の“基本”であることが描かれているのと同時に、規則に則って、会話を“暗号化”していることも見逃せない。
“規則”ももちろん必要なことだろう。
要するに“臨機応変な行動”こそが冒険にとって重要ということのようだ。
残念なことは、「スポックが死ぬ」ということを、本作を観る前から知っていたことだ。
当然「スポックが復活する」ということも観たこともないのに知っているが、それを知らないで見たら、果たしてどう感じただろうか。
“感動”はもっと大きかったように思われる。
バルカン人らしく、感情では行動せずに、すべて論理的に考えた末での行動ではあるが、やはり“友情” “エンタープライズ号に対する愛着”という非論理的な感情を思わずにはいられない。