8.《ネタバレ》 実物の戦車や、広大なロケーションが効果を上げたダイナミックな作品であるが、佳作と呼ぶにはいささかためらってしまう作品だと思います。
まず、大量殺人事件に自衛隊の暗部、地方都市の腐敗や予知能力を持つ少女、といった刺激的な題材を盛り込んだにもかかわらず、それぞれの関係性が薄く、ストーリーの芯をなかなかつかめないと感じました。
例えば、村の惨殺は農作物の病気が原因でしたが、三國連太郎の系列会社が流した工業廃棄物が原因だったとか、予知能力を持つ少年少女を自衛隊の研究班が人体実験のために誘拐している、などの相互関係がおり込まれていれば、主人公・高倉健の闘う意味がより大きく、力強くなったと思われます。
また、アクションシーンのぎこちなさ、出来の悪さは、かなりのマイナス点となってしまいます。同時期(翌年)製作の「戦国自衛隊」では、千葉真一がアクション監督をつとめ、素晴らしいアクションシーンを作り上げているのと、どうしても比べてしまいます。
厳しい言い方をすれば、派手な作りと高倉健という俳優に寄り掛かった内容の薄い作品という事になるでしょう。しかし、この作品には、映画の持つ大きな魅力の一つである「高揚感」があると思います。ポスターや紹介記事などをみて、ワクワクする気持ち、これこそ大作映画に欠かせないものであり、そういった意味では成功作と言えるのではないでしょうか。
追記として、最近原作を読んでみたのですが、ストーリーとしてはおおむね同じでしたが、大きく違っていた部分がありました。実は原作では、自衛隊はほとんどストーリーに登場していなかったのです(サバイバル訓練と特殊部隊出身という設定のみ登場)。上記の感想から改め、本作の脚本は、原作を決して壊さずに、映画向けのシークエンスを混ぜ込み、膨らみあがった要素をまとめあげた力作と感じました。