2.《ネタバレ》 物語的には興味を持続させる中心がなく推進力に欠ける。よって激しく中だるみしたりもするのだが、時々あっとおどろくような芸術的シーンが立ち現れるのでそのヌルさを責める気が失せてしまう。ずっと閉塞空間で進んでいた舞台が最後に雄大な自然に切り替わるので普通にカタルシスもある。そして音楽に対して監督はセルジオ・レオーネ並に鋭い見識をみせる。劇中の音楽は3種類。オープニングにも使われる生音のオペラ。ショックシーンに使われるハードロック。そしてほのぼのシーンの女性スキャット。オープニングのオペラはカラス(鳥ですよ=マリア・カラスじゃありませんよ)のどアップと鳴き声がかぶることにより極端に不穏な空気が漂い実に素晴らしい。ハードロックは「もう逃げられない」と歌っていてヒロインがいたぶられるシーンと犯人逮捕の両方のシーンにかけてあるのが見事。座布団1枚!そして苦痛の全てから解放されたラストシーンとエンドクレジットは女性スキャット。それまでの残虐行為はなんだったの?というくらい最後はいい話風の雰囲気でエンディングを迎える異化効果に驚愕!「手段のためには目的を選ばない」という諺があるが(いや、ない)まるでダリオ氏のためにあるような言葉だ。