3.《ネタバレ》 映画全体を通して過度な演出や脚色がなく真実味を帯びた場面の連続に、監督の意欲やこの映画の持つ力強さのようなものを感じました。
やはり一番印象に残ったのは、少年が病院に見舞いに行ったときに毒をこっそり持ち出すシーン以降の全て。
少年が毒を盛り父親に飲ませるシーンでは、少年の表情に緊張感や不安げな気持ちを一切出さず淡々と無表情で行為に及んでおり、またその前のコップに毒を盛る場面でも彼の手元にズームインしたりということはせず、カメラワークにおいても必要以上に見る側の視点を誘導することをしていなかった所にもリアリティが生まれ、真に迫ったより良い描写になったと言えると思います。
前半では、幼いながらも自分が家族を養っていかなければならないという責任感が見てとれただけあって、亡くなった父親が運ばれるシーンと同時に廃墟で独り遊びをしているシーンでは子供らしい一面が感じられて良かったと思ったのも束の間、最後のシーンではまさかという衝撃で、ここはショックを受けました。
少年の先生が、役に立たない者はいなくなった方が良いという内容の言葉を少年に言っていた事も、少年が行為に及んだ後に先生に告白する場面で初めて思い出されるくらいのごく普通の自然な会話の中での台詞だったので、これも物語の演出が少なかったことの裏返しとも取れると思います。
映画を観ていて、ストーリーの中の何気ないアクションや画面の中で起こっている微妙な表現や描写方法など、解説を見ずともその場で感知できるような感性を身につけていきたいと思わせる映画でした。