1.単なる金の亡者ってんじゃないの。倹約狂とでもいうか、腐りかけた肉を買って釣銭をもうけるあたりの壮絶さ。しかもきっかけが宝くじを当てた、ってのが面白い。ちょっと視点がずれれば落語の「芝浜」ふうの美談にもなるところが、あちらだと「悪」とか「妄執」とかいったもののエネルギーを発見していってしまう。醜いものそのものが、もう社会批判の材料といった役割を越えて、作品の動機になってる。性悪説というのとも違うんだろう。コッテリした肉食民族だなあ、としみじみ思う。旧約聖書といまだに通じている。それでいて情熱を描きながら、なんとなく冷ややか。海岸にたたずむ人々の荘重な構図。あるいは殺しの場、クリスマスツリーが両脇にあって、真ん中のドアを押して奥へ行き、左から斜めの光が二三本はいってて、惨劇の装置としてこの上ない。市井の事件が、まるで神々の物語のように昇華されていく。そしてラスト、地平線も定かでないように、世界全体が白く光っている。箱庭的な日本文化と一番遠い世界だろう。